士業・管理部門のキャリアコラムが集う場所|HUPRO MAGAZINE
士業・管理部門のキャリアコラムが集う場所

カテゴリ

「公認会計士という武器は、どんな所でも必ず生きる」株式会社ベーシック コーポレート本部 経営企画部長・内部監査室長 清水英次氏のキャリア遍歴と今後の展望

HUPRO 編集部
「公認会計士という武器は、どんな所でも必ず生きる」株式会社ベーシック コーポレート本部 経営企画部長・内部監査室長 清水英次氏のキャリア遍歴と今後の展望

公認会計士としてあずさ監査法人で10年間勤め、その後は株式会社ベーシックでインターネット事業という新たなステージにて活躍されている清水英次氏。現在はコーポレート本部 経営企画部長・内部監査室長として事業の成長を支えている清水氏に、公認会計士を目指したきっかけや監査法人から事業会社への転職を決めた理由、今後のビジョンなどについてHUPRO編集部がお話を伺いました。

【略歴】

​​2008年12月 会計士試験合格
2010年3月 大学卒業
2010年4月 あずさ監査法人入所
2019年7月 あずさ監査法人マネージャー
2020年7月 株式会社ベーシック経営企画部長

【キャリアグラフ】

武器を身に付けるために目指した公認会計士

—清水さんのキャリアグラフを見ると、会計士試験に受かった時点の満足度が非常に高いですね。清水さんが公認会計士を目指されたきっかけは何ですか。

私は大学付属の高校に通っていてそのまま大学に上がったので、高校時代は勉強とは無縁の生活を送っていました。大学に進学し、大学受験を突破してきた人達に囲まれた時に、自分も何か武器が必要だなと強く感じました。そこで、当時社会人の三種の神器と言われていた「会計」「英語」「IT」のどれかを武器として身に付けようと思い、数字を扱うことが好きだったので会計士を目指すことにしました。

—大学一年生の頃から公認会計士を目指されていたのですね。会計士試験合格に向けて、具体的にどのような勉強をしていましたか。

大事だと思うことは二つあります。一つは、毎日継続すること。継続のモチベーションを保つために、私は同じ専門学校に通っていた友人たちと励ましあって切磋琢磨していました。意外かもしれませんが、勉強時代はつらいことよりも友人たちとの楽しかった思い出の方が多い気がします。

もう一つが、インプットだけでなくアウトプットも意識することです。公認会計士にとって計算力の高さは切っても切れない関係にあります。計算力を鍛えるために、知識を身に付けるだけではなく問題をしっかり解くようにしていました。

—そして2008年12月、公認会計士試験に見事一発で合格されたのですね。本当に素晴らしいと思います。当時、今後のキャリアをどのように描いていましたか。

監査法人のような王道のルートに進んで、会計のプロフェッショナルとして事業会社とコミュニケーションを取って知見を増やしていけば、今後の選択肢も広がるんじゃないかと漠然と考えていました。そのため、公認会計士試験に合格し、社会人としての武器を手に入れたと感じたときは、ただただ「人生勝った」と有頂天になっていましたね。当たり前ですが、全然そんなことはなかったです(笑)。

あずさ監査法人に入社、理想と現実のギャップ

—大学卒業を控えて就活が始まると思うのですが、当時監査法人以外の企業は見ていましたか。

全く見ていませんでした。当時、公認会計士は監査法人へ行くという流れが強くありました。J-SOX制度や四半期報告制度の導入もあり、監査法人側の需要も高い時期でした。他の選択肢は考えていなかったので、監査法人を数社受け、中でも人柄の良さに惹かれたあずさ監査法人に入所を決めました。

—2010年4月にあずさ監査法人に入社され、清水さんの監査法人でのキャリアがスタートしたのですね。入社当時の具体的な業務を教えてください。

入社して1、2年目はオーソドックスな監査業務に携わっていましたね。国内の中・大規模の上場会社の監査をメインに担当していました。

監査業務はもっと華やかなものだと思っていましたが、資料の確認やデータの加工など地味な単純作業が多かったです。そこで、会計士を目指していた頃に抱いていたイメージとギャップを感じていました。もちろん、そういった単純作業の積み重ねで監査意見が出るので、誰かが実施しないといけないのは理解できていましたが、当時はそういった悶々とした気持ちはありましたね。

—キャリアグラフを見ると、「単純作業が多く、入社前とのギャップを感じる」という理由で満足度がガクッと落ちていますね。これにはどのような理由がありましたか。

入社した頃は監査業務の全体像が見えずに、先ほど言ったような作業が仕事の大半でした。監査業務の流れは学生時代に監査論の勉強をしていてなんとなくわかっていたので、そこに直接関われないもどかしさを感じており、もっと事業会社とコミュニケーションをとりながら監査を行い、知見を増やしていきたい気持ちが大きかったです。

—モチベーションが下がっている中で、なぜ監査法人で10年間勤められたのでしょうか。

それが監査法人は仕組みが上手いことできているんですよ。大体、監査法人に入るときは、公認会計士になるための最終試験である修了考査が終わってない人が大半なので、公認会計士の実務要件を満たすために監査法人に2、3年いようという人が多いです。

また、監査法人では3年程度のスパンでポジションが変わり新たに挑戦機会を渡されます。私も修了考査に受かったタイミングで転職を考えたのですが、自分が転職して新たにやりたい挑戦と監査法人に残ってできる挑戦を天秤にかけた結果、まだ監査法人でやれることや学べることがあるんじゃないかと思い、転職を辞めました。
そしてまた今の業務に慣れ、飽きてきた頃にポジションの変更があるので、その度にあと3年は続けてみようという気持ちになり、気づけば10年間監査法人にいました。

—監査法人に残ることを決め、公認会計士としてキャリアを積んでいく上で責任も増えていくと思うのですが、大変だったことはありますか。

会計士として相手の期待水準に応えるために、情報のキャッチアップをしていくことが大変でしたね。社会から見たら若者の年齢でも、事業会社からしたら高い報酬を支払っているプロの先生になるので、本を読んだり研修制度に参加したりすることで知識を身に着けることを意識していました。
監査法人に入ったら勉強しなくていいと思っていたのですが、むしろ入ってからの方が勉強することは多かったですね(笑)。

また、会計士として会計のことだけ分かっていても意味がなくて、ビジネスのことも分かっていないと監査はできません。ビジネスを学ぶために、同じような業種を担当している他の職員に相談したり、大手監査法人ならではの横や縦のネットワークを活用していました。

監査法人で感じたやりがい、転職のきっかけ

—再びグラフを見ると、入社されて6年目くらいに「役割変更やマネージャー昇進により、やれる幅や権限が増え、監査が楽しくなる」とあり、満足度が上昇していますね。

この時は現場のインチャージ(主任)を任されるようになり、担当する会社の規模感としても小さい会社から徐々に大きな上場会社になった時期です。インチャージ(主任)になると監査計画の作成等も主体的に実施でき、監査をどのように実施していくかという根幹に携わることができるようになったり、高度な会計上の論点を検討したりとやれる幅が多くなりました。

また、その後、マネージャーに昇進したことで人事のアサインなどの権限を持てるようになり、人材育成もより意識するようになりました。部下にどういったキャリアを歩んでもらうのがいいのか、どうやってメンバーを組み合わせるのがいいのか試行錯誤していました。

—マネージャーとして働かれる中で、意識されていたことはありますか。

上司と部下の板挟みのような立場でしたので、自分が緩衝材になるように意識はしていました。まさに中間管理職ですね(笑)。

例えば、上からの要求水準が高いものをそのまま手を加えずに下に通してしまうと、部下がどう動けば良いかわからず困ったり、膨大な仕事量を抱えて時には精神的にやられてしまうこともあるので、自らクッションになって下に落としたり、一度上に投げ返したりとコントロールをするようにはしていました。

—監査法人で勤められた10年間を通して、やりがいはどこに感じていましたか。

ありきたりな言い方ですが、感謝されることにやりがいを感じていましたね。一般的に、監査ってちょっと邪魔者のような扱いをされることがあります。その中で監査法人として誠心誠意対応し、クライアントの希望を可能な限り実現できると感謝されるので、そこにやりがいがありました。

今思えば、私は感謝されることに喜びを感じるマインドがあるので、厳しいことを言っていかないといけない側面もある監査には本質的には向いていなかったのかもしれません(笑)。

—反対に、監査法人で働かれる中で難しかったことはありますか。

監査法人は厳しく言わなければいけないことが多々あるので、それを上手く伝えることが難しかったです。特に会計や監査の知識の量や大事にしていることが違う中で、クライアントにいかに納得してもらうか。

「正解はこうなので貴社の処理は誤りです」というのは簡単ですが、監査を進めるための大事な前提として信頼関係があるので、そこを崩さずに説得することが重要です。会計や監査の知識も大事ですが、やはりコミュニケーション能力が監査において一番大事ということかもしれません。まあ、それを言うと監査に限らず社会人として一番大事なことかもしれませんが(笑)。

—監査法人10年目に差し掛かったところで、また満足度が下がっていますね。「残りの人生をすべて監査することに疑問を感じる」とありますが、このきっかけは何でしたか。

マネージャーのポジションの次に目指すべきパートナーに昇進するための時間的・能力的なハードルは高いだろうなと感じていたことが挙げられますね。どうしても上の役職が詰まっている組織構造になってしまっていたので、このまま監査法人で登っていくのは厳しいだろうなと考えていました。

また、この頃30歳を過ぎた時期で、このまま約40年近い残りの時間を監査法人に費やすことが自分のキャリアや人生にとって最善の選択肢なのかと改めて考えるようになっていました。

—このタイミングで転職を考え始めたのですか。

定期的に考えてはいたのですが、10年という節目があったのでこの頃から本格的に検討し始めました。監査法人でこのままキャリアアップしていくとなると次のステップは海外赴任が王道で、自分にも海外赴任の話が無くは無かったんです。

ただ海外赴任を選んだ場合、3年ほど転職のタイミングが遅れてしまうという点があったので、海外赴任と転職どっちを取るかという状況でしたね。自分のプライベートなど合わせて色々考えた結果、監査法人で続けていくのではなく外の世界を見てみようと思いました。

株式会社ベーシックに入社、ベンチャーならではの魅力

—転職活動をする上で、何か軸にしていたことはありますか。

絶対にどの業界に行きたいというのはありませんでしたが、第一に、人のためになる事業を展開している企業がいいなと思っていました。あとは、企業として面白そうなフェーズにあるかですね。急成長していくような企業に魅力を感じていて、その分課題も多く組織としての歪みもあると思うのですが、むしろそういったところに面白さを感じていました。

—現在勤められている株式会社ベーシックとはどのような出会いがありましたか。

友達の紹介がきっかけでしたね。ベーシックが会計士を探していると耳にしたのですが、それだけでは温度感が分かりませんでした。その後、ベーシック代表の秋山とご飯を食べに行く機会があったのですが、その時秋山が「会計士の資格があるし監査法人で続けていくのもいいと思うけど、一回も外の世界に出ないのはもったいなくない?」と言ったんですよね。

その言葉が強く印象に残っていて、確かになぁと納得したのを覚えています。会計士の資格があれば監査法人にはいつでも戻れるので、会計士という強い資格により得られる選択権を行使しないのはもったいないと改めて思いましたね。

—そして、2020年7月に株式会社ベーシックに入社されていますが、キャリアグラフでは「転職するが、スピード感についていけず苦しむ」とあり満足度が下がっていますね。

最初はとにかくスピード感についていけませんでした。私は監査法人の中では柔軟に働いてきた方だという認識があったのですが、ベーシックは「これやりたいですね」と言ったら「今日やろうよ」というくらいのスピード感でした。これはベンチャー企業の特徴でもあるとは思うのですが、監査法人とのスピード感に大きなギャップがあり、最初はついていくのに精いっぱいでした。

—それでも徐々にスピード感にも慣れてきて、今は「やれることも増えて楽しくなってくる」ことで満足度が上がっているのですね。現在はコーポレート本部 経営企画部長・内部監査室長を務められていますが、具体的な仕事を教えてください。

企業価値を最大化させることを目標に、経営企画部では主に中長期の経営計画とその立案のために必要な戦略の策定、事業部との間での予実管理の徹底を行っており、他にも法務や情報セキュリティなど様々な機能があります。内部監査室では内部監査を通じて、今後より責任ある立場の企業になっていくためのコンプライアンス・ガバナンス強化に努めています。

—清水さんが思う、現在の仕事を通してのやりがいは何ですか。

企業としての課題が大きいことにやりがいを感じます。ベーシックは急成長している会社なので、成長に合わせて水漏れのように課題が出現し、コーポレート側で対処すべきこともまだまだたくさんあります。困難な課題を経営陣やチームメンバーと協力して解決していけることが難しいですが、ワクワクしますね。

また、経営陣を中心にベーシックには優秀なメンバーがそろっているので、このメンバーがいればベーシックはもっと大きくなってくことができるのではと思っています。ベーシック社員はnoteでの発信を積極的に行っているので、是非見てみてください!【ベーシックのnote】

今後のビジョン、公認会計士が事業会社で働くメリット

—今後、清水さんが株式会社ベーシックをどのように成長させていきたいか、会社としてのビジョンはお持ちですか。

会社を大きくしていくことが面白いので、IPOなどの選択肢を通じてより会社を大きく育てていきたいです。その延長線上にベーシックが掲げている「Webマーケティングの大衆化」があると思っているので、そこをしっかり実現していくためにコーポレート部門としてできる限りのことをやっていきたいです。

現在、BtoB企業の取引市場は、国内でも最大規模の約350兆円とも言われています。一方で、マーケティングを推進し、オンラインでの取引を実現したいと思っているものの、「知識」「環境」「人」不足という問題を抱えていることにより、なかなか推進できない企業が多いのが実情です。それを私たちがテクノロジーの力で解消することで、社会全体が円滑に回っていくと考えています。オフラインよりもオンラインの需要が高まる今、ベーシックが課題解決に取り組むことで社会に大きなインパクトを与えられると信じています。

—清水さんご自身の今後のビジョンを教えてください。

今はベーシックを大きくすることに全力を注いでいます。会社が大きくなること、自分もより責任ある立場になることで、いろいろとやれる幅が広がっていくと良いですね。また、監査法人という今のメンバーにはないバックグラウンドだとも思っているので、自分が今まで得てきた知見を既存のメンバーにも共有し、コーポレートをより強固にしてきたいです。「ベーシックのコーポレートは盤石で羨ましい!」と外部から言われるようにできたら最高ですね。

—経営企画部長・内部監査室長として社員をマネジメントする立場から、清水さんが求める人物像はありますか。

逆算志向は大事にしたいポイントです。監査の話になりますが、監査は計画が9割だと思っていて、計画が上手くいっていれば失敗することはほとんどありません。達成したいゴールから逆算して計画を立てることが大事で、これは監査に限らず様々な業務のベースになる能力だと私は考えています。

ベーシックでは、働くうえで大事にしたい行動特性をBP(Basic Power)と定義していて、「GOAL ORIENTED」「TRY&LEARN」「TEAM SPIRIT」の三つを定めています。先程の逆算思考(「GOAL ORIENTED」)に加えて、「TRY&LEARN」であれば、とりあえずやってみてそこから学びを得ようという姿勢のことで、これは組織にマインドとして染みついてます。会社の中で課題が出てきても、誰のせいでそうなったのかと責任の所在を問うことはなく、そこから何を学べたかを大事にします。

BPがある人なら、ベーシックの方向性と合った働き方ができると思いますし、そういう人材を求めていきたいです。

—清水さんが思う、会計士が事業会社に転職するメリットはありますか。

たくさんあると思います。監査は企業を外から見る立場でしかないので、その数字の背景に何があるのかなど全てを100%理解することはできません。しかし、事業会社に入るとどのようなプロセスで数字が作られているのかを、解像度高く明確に理解することができます。監査法人でのキャリアを築いていくとしても、一度事業会社で働くと視野が広がるので非常に大きなメリットになると思います。

—最後に、公認会計士を目指すヒュープロマガジン読者の方々へ、メッセージをお願いします。

公認会計士の最大のメリットはキャリアの選択肢が格段に増えることだと思います。社会からの信頼度の高い資格ですし、チャレンジして失敗したとしてもやり直しがきく立場ではないでしょうか。

監査法人でキャリアアップするのはもちろん、それ以外の職に就くとしても公認会計士という武器は必ず活きます。ぜひ公認会計士になり、一緒に公認会計士業界を盛り上げていきましょう。

―本日は貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

本日お話を伺った清水氏が経営企画部長・内部監査室長を務める、株式会社ベーシックのHPはこちら 清水氏のTwitterはこちら

この記事を書いたライター

HUPRO MAGAZINEを運営している株式会社ヒュープロ編集部です!士業や管理部門に携わる方向けの仕事やキャリアに関するコラムや、日常業務で使える知識から、士業事務所・管理部門で働く方へのインタビューまで、ここでしか読めない記事を配信。
カテゴリ:キャリア

おすすめの記事