「マーケターの価値を明らかにする」を理念とし、2019年3月に設立された一般社団法人マーケターキャリア協会(MCA)。その背景にはマーケターが高度な能力を持つ専門職として認知されておらず、企業内の定期的な人事異動によって積み上げてきたキャリアが突如断絶するケースも多いからだという。
「ビジネスにはマーケティングが不可欠」という考えに異を唱える人はいないだろう。しかし、それを専門的に手掛ける「マーケター」の存在感はまだ大きいとは言えない。そんな中、マーケターのキャリア構築支援を主な目的として19年3月1日に発足したのが、マーケターキャリア協会だ。
MCAの理念は「マーケターの価値を明らかにする」。そのためのミッションとして、「ビジネスを動かすマーケティングの貢献度を可視化する」「プロフェッショナルとしてのマーケターのキャリア構築を支援する」「ビジネスパーソンのマーケティング思考を育成する」の3つを掲げる。具体的には経営者への意識調査やマーケティングの貢献度調査、メンターシッププログラム、マーケティング思考を育成するセミナーの実施などを想定しているという。
「クリエーターは個人名で広告賞を受賞して独立するなどキャリアアップの道が開かれている一方、マーケターは起業して生計を立てるのが難しいのが現状。高度な能力を持つ専門職として認知されておらず、企業内の定期的な人事異動によって積み上げてきたキャリアが突如断絶するケースも多い。テクノロジーの進化で生活者の行動が多様化し、コミュニケーション手法も複雑化する中、市場を創造するマーケターはますます必要不可欠な人材になる」と、MCAの小野進一代表理事は言う。
同協会は設立に当たって、マーケティング関連職従事者に対するアンケート調査を実施。それによると、事業会社のマーケターは自分の仕事内容に満足している人が多い一方、経営層の理解や能力開発のための社内サポート体制に満足している人が少ない。さらに、起業や他部門への異動よりも、所属部署での昇進や転職を希望する人が多かったという。
興味深いのはそれに合わせて行われた、マーケティングやマーケターの定義に関するアンケート結果。事業会社の経営層がマーケティングを「経営そのもの」「ビジネスの根幹を担う」と重要視する一方、学生に「マーケターというとどんな仕事をしている人を思い浮かべるか」と質問したところ、「事業会社」よりも「マーケティング関連会社(リサーチ、アドテクノロジー開発会社など)で働く人」という回答のほうが多かったのだ。優れたマーケター育成のためには、学生への啓蒙も重要になるだろう。
無料会員の募集をスタートしたところ、1週間で300人超の申し込みがあったという。マーケターがマーケターをマーケティングするという前代未聞の試み、まずは順調なスタートと言えそうだ。