「今の僕は“人の繋がり”があったから」縁を紡いできた甲斐雅之のキャリアの歩み方

外の世界に連れ出してくれた人。そこから繋がる不思議な縁で、自分のキャリアが拓かれていく。そんな経験をした人はいないでしょうか?

色々なキャリアの人たちが集まって、これまでのキャリアや将来への展望などを語り合うユニークキャリアラウンジ第44回目は、新卒で株式会社ベーシックに入社し、現在はフォーム作成管理ツール「formrun」のプロダクトオーナーを務めている甲斐雅之さんにインタビュー。

オウンドメディアの編集や採用広報戦略も担当するなど、多岐に渡って活躍される甲斐さん。「人の繋がりがあったからこそ、今の僕がある」と、ご自身の経験談を語ってくださいました。

外の世界は刺激的なんだと初めて知った

― 新卒でベーシックさんに入社したのが2017年ですか?

そうですね。でも、学生の頃からベーシックでインターンしたり、別の会社で業務委託で働いたりしていたので、キャリアのスタートはもう少し前になります。

― 学生で業務委託として働いてるのは珍しい……!元々ビジネスには興味あったんですか?

いや、もう全然です(笑)。大学入学後は塾講師のアルバイトに毎日精を出していて、あまり大学に行かず、趣味の音楽に没頭するっていう。よくいる普通の学生でした。

― そこから、どんなきっかけでビジネスの道に?

一緒に働いていたアルバイトの先輩が、スタートアップ界隈でめちゃくちゃ活躍されている方だったんです。当時、株式会社SmartHRで採用責任者を務めていた勝股さん(現在は株式会社カンムにて人事を担当中)という人なんですけど。

勝股さんはSmartHRに入社する以前からスタートアップの方々が集まるイベントに顔を出していたみたいで、よくベンチャーや起業に関する情報を聞かせてもらっていて。こんな面白くて刺激的な世界があるんだ、ってそこで初めて知ったんです。

勝股さんがいなかったら、外の世界を何も知らないまま、塾講師を4年間やっていたかもしれないですね。

― 面白そうと思っても、そこ止まりで次に繋がらない人も多いところ、甲斐さんはそこからどのように動いていったんですか? 

ベンチャーやスタートアップに興味を抱き始めてからは、色んなイベントに顔を出していました。なんの知識も持っていなかった当時の僕を、そうした界隈へと連れ出してもらえたのは大きかったですね。

一歩目が踏み出せれば、その場で新しい繋がり生まれ、人伝てに世界が広がっていきますし。それこそ、勝股さんと一緒にベンチャー企業で働く機会をいただいて、少し業務のお手伝いをしたりとか。

外に連れ出してくれる存在と、自ら外に出てみようとする意気込みや行動が大切なんだ、って学びましたね。

Twitterのフォロワー数が1万人に。偶然気付いた自分の強み

色々な繋がりができていく中で、どのように業務委託として仕事を任されるまでになったんですか?

仕事をもらえたのは、僕がやっていた匿名のTwitterがきっかけですね。

― 匿名アカウントからなんですね。

匿名なので詳細は言えないんですけど、とあるローカルエリアの情報を発信するTwitterのアカウントを運営していたんですよ。

そのエリアに住んでいる人に対して、興味を惹くような情報を発信していました。そこで「求めている情報を発信すれば、みんな見てくれるんだな」って学んで。

― それがきっかけ?

そうですね。発信しているうちにフォロワーが1万人超えまして。

― え、1万人!すごい……。

イベントで繋がった人に「こういうことやってるんです」ってTwitterの話をしたら、「それマーケティングじゃん」って言われ始めて。自分では意識していなかったんですけど(笑)。

そこから、「ウチでも似たようなことやってよ」って声をかけてもらえるようになったんです。そうした経験を重ねるうちに「これって僕の得意なことなのかも」と思い始めるようになりました。

― なるほど。自分の強みを認識して、そこから仕事になっていったんですね。 

そもそも、僕は器用なタイプじゃないんですよ。苦手なものはとことん出来ない。そんな自分でも、意識しないうちにマーケティングのようなことをやって、数値も伴った成果を出せていた。

偶然のきっかけで始めたことでしたけど、自分の強みを認識することができましたね。

― そのTwitterを運用し始めたのは何故だったんですか? 

そのエリアで情報が欲しいと言っている声は結構あったのに、発信しているメディアがなかったんですよ。僕もその情報は欲しかったから、ないなら自分でやってみようって。

― すごい。その発想がすでにマーケターでもあり、プロダクトマネージャーっぽい。 

確かに(笑)。面白がって取り組んでいましたし、強みと興味が交差していたのは嬉しいことですね。

「話聞いてもらえませんか?」人の繋がりから始めた就活

― それだけ数字出せていたら、そのままフリーランスでやっていこうと考えても良さそうですけど。

実際に考えていた時もありました。延長線上で続けていけば、稼ぎにも困らなさそうとは思っていましたし。

でも、自分のキャリアや、将来的にスケールのある仕事をやりたいという、長期的な視点の大切さに気づいて、就職することにしたんです。

― どういうことを考えての決断だったんですか?

やっぱり最初からフリーランスを選択しちゃうと、自分が当時持ち合わせていたスキルに合わせた仕事しか取り組めない。。このまま続けていても、今持っているスキルの切り売りで終わっちゃいそうだな、と。 

― 短期では稼げるけど、長期ではどうかなって。 

そうですね。キャリアに幅を持たせるっていう意味でも、一旦は何でも吸収しますっていう立ち位置に身を置くのも大切だと考えました。

― じゃあそこから就活を始めたんですね。 

でも、就職するって決めて動き始めたのが大学4年生の7月だったんですよね(笑)。

― どこも閉じちゃってるじゃないですか。 

そうなんですよ(笑)。なので、普通に採用エントリーを申し込んでも上手くいかないと思い、採用媒体を使うことなく、元々繋がっていた社会人の方々にメッセージを送ることから始めました。

「就活しようと思ってるんですけど、話聞いてもらえませんか?」って。 

― その就活のやり方は斬新ですね……。会ってもらえるものなんですか? 

ありがたいことに結構面白がってもらえて。ベンチャーの役員の方とも会わせてもらったり。

しかも、ベンチャー企業に務めている人事の場合、横の繋がりの強さから、互いに就活生を紹介し合っていることも多いですよね。なので、「ウチは合わないかもしれないけど、ここの会社は良いかもよ」って紹介してもらえたりもしたんです。 

― すごい。ここでも一歩目の力ですね。動いたら繋がっていった。 

たしかに、そうかもしれないですね。行動したらどんどん繋がっていきましたし。ベーシックともそうやって出会えたんですよ。

― 色んな会社が甲斐さんのことを面白いと思っていた中で、ベーシックさんに決めたのは何故だったんですか? 

僕のパーソナルな部分を全部ひっくるめて見てくれたのが決め手ですね。

面白いと思ってくれただけじゃなく、「こういう部分ではつまづきそうだね」と苦手なことや不得意なことを理解してもらえたんです。そして、その上で一緒に働きたいと言ってもらえた。

それがとても嬉しかったし、飾らない自分自身を見てくれる良い会社だなと感じて決断しました。

― マイナスなところも含めたコミュニケーション。ちゃんと自分を見てもらえる信頼を感じられますよね。 

さっきもお話したように、僕は得意不得意がはっきりしているので。その凸凹を理解してもらえたのは、本当に恵まれている環境ですよね。 

プロダクトオーナーがぶつかった壁。決める、って難しい

― ベーシックさんと出会い、インターンを経て2017年に入社。formrunのプロダクトオーナーになったのはいつ頃ですか? 

1年目の終わりくらいからですね。それまでは、インサイドセールスやカスタマーサクセス、Webディレクターや商品の生産管理やイベント企画/運営、事例取材など、結構なんでも屋に近い役回りで動いてました(笑)。

― そこから、どのような流れでプロダクトオーナーに抜擢されたんでしょうか?1年目の終わりとなると、かなり早いタイミングでの抜擢かと思います。 

ベーシックがformrunの事業を買収したのが、ちょうど1年目の終わりだったんですよ。今の会社に入るときに、ずっとformrunを担当していた方が別部門に移ることが決まっていて、たまたま空席が出来たタイミングだったんです。

 ― そこで甲斐さんに任せよう、と。

会社としても若い人に任せていきたい、という方針があったみたいで、「甲斐はなんでもやるから、やらせてみよう」という流れで抜擢してもらえました。

自分は割と調子に乗りがちな性格なんですが、出る杭を打つんじゃなく、「ほら、やってみ?」と、ポテンシャルを伸ばす機会をいただけたのは、本当にありがたい限りですね。

― プロダクトオーナーという、責任も背負う立場になっていかがでしたか?

いや、もう難しいなって。事業責任を担う立場になったら、決めないと本当に何も動かない。もちろんロードマップや基本方針はあるんですけど、どの道を走るか、の最終的なジャッジは、年齢差関係なく全員が自分に委ねてくるので。

 何かを決めるってこんなに難しいんだ、って初めて実感しましたね。

 ― 自分が決めないと何も動かない。

何をやっても不正解に見えるし、正解にも見える。でも、部署の人への説明責任もあるから、意志や根拠は必要になる。数え切れないほど至らないと感じた機会がありましたし、壁にぶつかりっぱなしでした。

人と環境への感謝を胸に。甲斐雅之の挑戦

その壁は、どのように乗り越えたんですか? 

わからないものは、自分1人でくよくよ考えても、ずっとわからない、だったら人に聞こう、と割り切ったんです。そこで、初めて実名のTwitterアカウントを作って。 

― あ、それまで実名での発信はしていなかったんですね。 

自社プロダクトのことも発信しながら、いろんな人の元へ会いに行くためのアカウントを作ったんです。社内の人にも話を聞いてはいましたが、、社外の人にもTwitter経由で連絡して、とにかく教えを請いに行っていました。

自分の実力だけじゃ絶対に繋がることのできなかった、第一人者のマーケターの方々や、プロダクトをスケールさせた経験を持ち合わせた方々とか。一番取り組んでいた時期は、毎日別の社外の人とランチしていましたね。

― Twitterでフォローして、DM送って? 

そうですね。実名でTwitterをやっておくと、そうやってお会いしたときでも、時間の密度が全然違うんですよ。

― 時間の密度ですか? 

実名で普段から発信していると、相手も僕がどういう人で、どういうことに悩んでいるかが事前に分かるじゃないですか。なので、ランチ1時間でも、すごく実のある話が出来るんです。

時間の密度を濃くできたことも相まって、必要な知識を身につけるための学習コストは、ものすごく下がりましたね。色んな人の経験や考えを吸収させてもらえて、振り返れば相談に乗ってくださった方々への感謝しかありません。

― なるほど。人の繋がりを大事にされる甲斐さんらしさが出ていますね。そのように多くの人と繋がる中で、何か意識している点などはあるんですか?

意識はしていないんですけど、僕かなりのいじられキャラなんです(笑)。なので、集まりに顔を出していじられていると、周りにも気にかけてもらえるというか。その場では恥ずかしい反面、構ってもらえるという意味では、やっぱりありがたいなと思ってしまいますね。

でも、そのキャラで仕事が出来なかったら“ただの仕事ができないイジられている人”になってしまうので、危機感はあります。絡みやすいキャラではあるものの、仕事上のコミュニケーションはしっかりしている。そこのメリハリは意識しているかもしれません。 

― 確かに、そこで良い意味のギャップがあると信頼してもらえそうですね。 

本当に周りの人や環境に恵まれているな、と思います。得意不得意の凸凹が大きい僕ですけど、強みの部分を受け入れてくださる人が多いから、今日まで生きてこられたと思っています。

苦手な部分と向き合うことも大切ですけど、やっぱりその人の一番得意なところを活かした方が良いんだろうな、って。

繋がりが増えてきて、いろんな方といろんな仕事をするようになって、より一層感じますよね。改めて、自分を伸ばしてくれたベーシックに感謝しかありませんし。

去年は不自由なく社内外で様々な経験を積める機会をいただけたので、今年はベーシックに全力投球したい。外資系のサービスでは、Slack や Zoom など、まずは無料で使えるクラウドサービスが台頭していて、formrunも同様に成長可能なポテンシャルを秘めています。日本企業が開発したformrunを、誰もがフォームを作成するときに利用するサービスにしたいと思っています。

ベーシックでは「プロフェッショナルな人であること」をモットーに働いている人が多いので、そうした精神を理解し、改めて日々努力していきたいですね。

 

=====
取材:西村創一朗
写真:山崎貴大
文:安久都智史
デザイン:矢野拓実